February 28, 2023

日本企業が抱えるシステム開発の課題と今後のオフショア開発の方向性とは

日本企業のシステム開発は、IT人材不足と開発コスト増加が大きな問題となっています。急速なデジタル化とテクノロジーの進化に追いつくための、適切なITエンジニアやデジタル専門家の確保が難しく、開発コストも上昇しています。この課題に対し、「リスキリング」と「オフショア開発」という解決策が注目されています。企業は、内部のスキル向上とグローバル競争への対応を目指し、オフショア開発を 人材戦略に活用することで、人材不足を克服し、競争力を高める展望が期待されています。

オフショア開発の現状

DX人材不足の解決策としても注目されている、オフショア開発の現状を紹介します。

オフショア開発の規模が拡大している

経済産業省が2019年に発表した「IT人材育成の状況等について」によると、日本では2030年までに約59万人のIT人材が不足すると予想しています。今後も優秀なエンジニアを確保するために、オフショア開発を導入する企業の増加が考えられるでしょう。

DX推進やシステム開発の需要拡大により、日本でのオフショア開発の規模は拡大しています。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の調べでは、日本のIT企業の約45.6%がオフショア開発を導入している、またはなんらかの形でオフショア開発に関与しているというデータがあります。

中小企業の委託元が増加している

海外進出のため費用と手間がかかり、少し前まではオフショア開発を導入しているのは大企業が多い傾向でした。しかし、最近ではグローバル化が進んでいることや、オフショア開発のノウハウが蓄積されたことによって中小企業の委託元が増加しています。

委託先国としてベトナムが人気

オフショア開発の委託先といえば、かつては中国やインドが人気国でした。近年では人件費が安く、優れた人材が豊富で、真面目な国民性などの要因を持ったベトナムが人気を集めています。

オフショア開発の希望委託先国について、オフショア開発.comがまとめたデータ(2020年1月〜12月に「オフショア開発.com」に寄せられた開発相談の希望委託先国別ランキングより)によると、1位がベトナムで、全体に占める割合は52%でした。

日本企業のオフショア開発導入の目的の変化

昨今、日本企業のオフショア開発導入の目的が変化してきています。以前は、コスト削減が主な目的でしたが、企業のデジタル競争力を高めるDX人材不足の対応策や、品質の確保といった目的にシフトしています。

NFT、DeFi、Web3.0、メタバースなどの新しい風潮

スイスのIMDが発表している「世界デジタル競争力ランキング」で日本は2020年に63カ国中27位という結果で、2021年には28位と順位を下げています。日本の順位は年々デジタル競争力を高めている香港や韓国、台湾と比べると対象的な数値となっています。

日本企業のデジタル化が世界各国の企業より遅れている理由の一つに、DX人材不足が挙げられます。そのため日本で不足しているAI、IoT、ブロックチェーンなどの先端技術スキルを持った人材を補うために、オフショア開発導入に向けての動きが増しているのです。さらなる企業のオフショア開発導入の加速に向けた背景にあるのが「NFT」「DeFi」「Web3.0」「メタバース」などの新しい風潮です。

ブロックチェーン技術をベースにして唯一無二の「一点もの」を生み出せるトークンである「NFT」、金融エコシステムの「DeFi」、仮想空間の「メタバース」など、これらはIT業界やテック業界を越えてさまざまな業界で注目を集めています。これらNFT、DeFi、メタバースなどのブロックチェーン技術をベースにした各カテゴリーを包括する位置付けとなるのが「Web3.0」です。

Web3.0は「分散型のWeb」を意味し、巨大IT企業による支配からのデータの解放を目的としています。世界各国がWeb3.0推進への取り組みが進む中、日本の出遅れを防ぐため日本政府が2022年6月に経済財政運営の指針である「骨太の方針」にWeb3.0の環境設備を明記しました。日本のグローバルな競争力を高めるには、Web3.0のブロックチェーン技術は欠かせません。

オフショア開発における今後の方向性

こうしたことを踏まえ、日本企業のオフショア開発導の今後の方向性は次のようなことが考えられます。

オフショアの役割を下流工程から上流工程まで拡大する

実は、オフショア開発の対象業務は、国によって異なります。例えば、米国企業では、上流工程から下流工程まで任せるのが一般的です。米国のユーザー企業は多数のITエンジニアを採用し、社内のIT部門に配置しているため、基本的には自社システムの開発から運用まで内製化するのが主流です。これは、社内技術やノウハウを社外に流出させないためでもあり、日本のように自社のシステム開発を外部のSI企業に全てお任せするということはありません。

オフショア開発などの外部リソースを活用するのは社内でリソース不足が発生した場合です。また、ユーザー企業にとって開発プロジェクトが完了したら終わりということはなく、リリース後にブラッシュアップしていくことを前提として、アジャイル開発でによってサービスインまでの期間を短縮できるのが特徴ですなどので補うというにで、自社のエンジニアのスキルアップにつながっています。これまでの日本企業のオフショア開発では、海外の委託先には下流工程中心にまかせるのが一般的でした。

従来型の形態では、日本のエンジニアの技術スキルが低下する懸念もありつつも、日本企業が海外の企業と同じような導入形態にならないのは、顧客の要件定義が固まらないという課題があったからです。そこで、作業要領も含め日本での開発と同様に、要件定義を明確に行うことで課題の解消につながり、日本企業でも委託先に上流工程までまかせる動きが拡大しています。これにより日本のDX人材強化も期待できるでしょう。

DX領域にシフト

従来、日本企業が海外の委託先にまかせていたのは、基幹システムや既存システムが中心でした。しかしながら、日本企業が変化の激しいビジネス環境の中で優位性を確立するには、デジタル競争力を高めることが急務となっています。DXによる事業改革が不可避となっている昨今、AI、IoTといったDX領域へと業務の委託内容がシフトしています。

ここでDX領域を委託する際に課題に挙がるのが、海外の委託先にDX領域の開発をまかせてしまうため、自社のエンジニアのスキルアップにつながらないことです。課題の解決策として、上流工程、下流工程の分担を明確にしているウォーターフォール開発ではなく、チームを組んで海外のエンジニアと一緒に要件定義、設計、開発、テストといった開発工程を行うアジャイル開発の活用があります。

日本のエンジニアにとっても、海外の優秀なエンジニアと一緒のチームで働くことで、スキルアップにつながることが期待できます。大手のオフショア開発企業や弊社のエンジニアの技術レベルは高く、DX時代にふさわしい優秀な人材を確保することも可能です。

人材不足面でのオフショア開発活用

上記の1、2では日本のDX人材、エンジニアのスキルアップに向けたオフショア開発企業の活用についてお伝えしましたが、日本国内のIT人材不足はいまだ解消されていません。日本におけるDX領域の開発は急務ですが、依然としてレガシーシステムは稼働しており、メンテナンスや運用、開発のための人材が必要です。

しかし、日本のIT人材絶対数の不足もさることながら、日本国内の若いエンジニアにはPythonなどの言語が人気で、レガシーシステムなどに必要なCOBOLなどの昔ながらの言語は不人気という状態です。このような既存システム、基盤システムなどのレガシーシステムにおける人材不足面を解消するためにも、オフショア開発が活用されています。

オフショア開発導入はDX人材不足解消と育成につながる

DX時代の人材戦略「リスキリング」の重要性

日本の近年、グローバルな競争が激化する中、日本企業はさまざまな手段を活用して競争力を高めることが求められています。日本のデジタル競争力を高めるためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が叫ばれるものの、国内のITエンジニアやDX人材などの人材不足が大きな課題となっています。

日本のITエンジニアやDX人材不足は、急速なデジタル化やテクノロジーの進展に追いつくことが難しくなっています。このような状況下で、企業は従業員のスキルアップを重視し、最新の技術やトレンドに対応でき、変化するビジネス環境に適応できる人材を育てる必要性があります。こうしたことから、日本のITエンジニアやDX人材不足を解消するため、「リスキリング」が注目されています。

リスキリングとオフショア開発の関係性

オフショア開発は、日本のITエンジニアにとって新たなスキル向上とグローバルな成長の機会を提供する重要な手段となっています。

オフショア開発を活用することで、日本のITエンジニアはグローバルなプロジェクト経験を積むことができます。異なる国や地域の開発チームと協力することで、異文化環境におけるプロジェクト管理やコミュニケーションスキルが向上し、柔軟性や適応力を高めることができるでしょう。

そして、オフショア開発では、リモートコミュニケーションが主要な手段となります。ITエンジニアは遠隔地の開発チームと円滑にコミュニケーションを取るため、効果的なコミュニケーションスキルを磨く必要があります。適切なコミュニケーションにより、要件の理解や問題解決がスムーズに行われ、プロジェクトの成功につなげることができます。

さらに、オフショア開発によって最新の技術トレンドにアクセスする機会が増えます。世界中の開発者と協力してプロジェクトを進めることで、新しい技術や開発手法を学び、実践する機会が増えるでしょう。これにより、ITエンジニアの技術力や知識が向上し、自己成長が促進されることが期待されます。

また、オフショア開発には異なる地域の開発チームと協力することが求められます。これにより、ITエンジニアはチームワークとリーダーシップのスキルを発展させる機会を得ます。プロジェクトの成功に向けて指導力を発揮し、チームと協力して目標を達成する経験を積むことで、エンジニアとしての成長が促進されるでしょう。

こうしたことから、オフショア開発の経験は、日本のITエンジニアのスキルアップとグローバルな視点の向上に寄与すると言えます。グローバルなプロジェクト経験、コミュニケーションスキルの向上、最新技術の習得、チームワークとリーダーシップの発展といった点に着目することで、オフショア開発がエンジニアのキャリアにプラスの影響を与えることが期待されます。

オフショア開発とリスキリングの組み合わせは、企業のデジタル化戦略を推進する上で有益なシナジーを生み出すことが期待できます。

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オフショア開発入門ガイド2023

オフショア開発を始める前の気になる疑問を解決!オフショア開発を検討中の方に向けて、オフショア開発の基本的な知識から注意点までを解説します。

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June 13, 2025

アジア・シームレス物流フォーラム2025出展レポート

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May 30, 2025

SusHi Tech Tokyo 2025出展レポート

株式会社リッケイは、2025年5月8日~10日に東京ビッグサイトにて開催された、東京都主催の「SusHi Tech Tokyo 2025」に出展しました。  本イベントは、国内外のスタートアップ、行政、投資家、企業が一堂に会し、「持続可能な未来都市」の実現に向けた技術・アイデアを共有する、日本最大級のグローバル・イノベーション・カンファレンスです。  2回目の開催となる今回は、国内外613社のスタートアップが出展し、ユニコーン企業や大企業経営者のリーダー、投資家、海外政府高官などによるセッションやピッチコンテストも実施され、昨年を大きく上回る57,000名の来場者を記録しました。  出展ブースの概要と展示内容 当社は、当社社長が共同会長を務める一般社団法人「在日ベトナムDX協会(VADX)」の取り組みの一環として、「ベトナム都市ブース」に共同出展いたしました。ブースでは、高品質かつコストパフォーマンスに優れるベトナムオフショア開発、自社製 AI搭載ロボット(AMR)、多彩な開発実績やITリソースをご紹介し、幅広いITニーズや最先端テクノロジーへの対応力を紹介しました。  当社ブースでは、以下の技術・サービスを中心にご紹介しました: ・高品質かつコスト効率に優れたベトナムオフショア開発 ・ AI/クラウド/IoTなどの最先端ソリューション ・自社開発のAI搭載ロボット(AMR) ・多様な業種に対応可能な豊富な開発実績・ITリソース  これらのソリューションを通じて、当社の技術力や課題解決力、柔軟な対応体制を幅広く来場者にご理解いただく機会となりました。 リッケイの展示内容 当日ブースの様子 当社ブースには、国内外の多くの来場者が訪れました。特に、AIやIoTといった先端技術への対応力、自社の開発要員およびオフショア拠点を活用した高効率な開発体制、そして日本企業との豊富な取引実績や豊富なITリソースに対して、高い関心が寄せられました。  なかでもロボティクスに関心を持つ来場者からは、展示したAI搭載ロボットについて、機能や活用シーン、他システムとの連携方法など、具体的なご質問を多数いただきました。  リッケイのブースの様子 出展時に寄せられた主なご相談内容 【ご相談①】日本本社のシステムのアメリカ現地法人への導入展開に関するご相談 リッケイソフトグループは、アメリカをはじめとする複数国に現地法人を有しており、日本側の業務要件やシステム仕様を正確に把握した上で、現地の業務・法制度・言語に即したローカライズ支援が可能です。英語・日本語の両言語に対応可能なエンジニアが在籍しており、本社と現地の円滑なコミュニケーションを実現します。これまでにも、基幹システムや販売・在庫管理システムの海外展開を多数支援してきた豊富な実績があり、業種を問わず柔軟に対応できる体制を整えています。  【ご相談②】要望に応じたロボットのカスタム開発に関するお問い合わせ リッケイでは、お客様のご要望を丁寧にヒアリングした上で、ソフトウェア開発チームとハードウェアパートナー企業との連携体制のもと、最適なロボットソリューションを開発します。業務効率化や省人化、品質向上を目的としたロボットの設計からソフトウェア開発、実機連携まで一貫して対応します。 AI技術を活用した自律移動型ロボット(AMR)の開発実績もあり、製造・物流・小売業など幅広い業界に対応しています。日本語での要件定義からPoC、量産化まで、柔軟かつスピーディーな対応を強みとしています。  【ご相談③】上流工程の支援体制についてのご質問 リッケイは、要件定義・基本設計などの上流工程から開発・テスト・運用保守までワンストップで対応可能です。日本語に対応可能なPMがプロジェクトを主導し、ベトナムのオフショア開発チームと連携することで、高品質かつコスト効率に優れた開発体制を構築しています。特に、倉庫管理システムや販売管理システムなど、業務理解を要するシステムにおいては、上流工程からの参画により、業務課題を的確にシステム要件へと落とし込む支援を行ってきました。業務に深く寄り添う提案力と柔軟な開発体制を活かし、お客様のDX推進をサポートしています。    今回のSusHiTech Tokyo 2025出展は、当社が提供するベトナム発の高品質なITソリューションを国内外に発信する貴重な機会となりました。リッケイは今後も、日本全国のお客様にコストパフォーマンスに優れた実効性の高いITソリューションを提供してまいります。 この度は、弊社ブースにお立ち寄りいただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。  

March 10, 2025

Rikkeisoft、全社的なAI導入を本格始動

2025年3月、創立13周年を迎えたRikkeisoftは業務効率の向上とさらなるサービス価値の強化を目指し、全社的なAI技術の導入を本格的に開始しました。2025年3月5日には、「2025年 Rikkeisoft AIプログラム キックオフイベント」を開催し、AI導入の方針を発表するとともに、社員がAIを活用しながら業務を最適化するためのロードマップを示しました。 本記事では、企業がAIを導入すべき理由、RikkeisoftのAI戦略、2025年AIプログラムの具体的な内容、そしてAI導入が社員や会社の成長に与える影響について詳しく解説します。  AIの歴史と今 AIの進化と現状—なぜ今、企業はAIを導入すべきなのか? AIの歴史と進化—技術革新がもたらした転換点 AIの概念は1950年代から存在していましたが、実際に私たちの生活に大きな影響を与え始めたのはここ10年ほどのことです。特に2010年代以降のAI技術の進化が、企業におけるAI活用を現実のものとしました。  2011年:AppleのSiriが登場—AIが身近な存在に AppleがiPhoneに搭載した音声アシスタント「Siri」は、AIが日常生活に浸透する第一歩となりました。これにより、音声認識技術の実用化が加速し、AIがビジネスや個人向けサービスに取り入れられるきっかけとなりました。  2022年:ChatGPTの登場—AIが対話型へ進化 OpenAIが発表した「ChatGPT」は、AIの可能性を大きく広げました。従来のAIは特定のタスクに特化したものが多かったのに対し、ChatGPTは自然言語処理(NLP)技術の飛躍的向上により、幅広い分野で活用可能になりました。  2024年:ChatGPTがSiriと統合—AIがより高度で直感的なものに 2024年、AppleはChatGPTをSiriに統合し、ユーザーの体験を大幅に向上させました。これにより、AIが人間のような会話を理解し、適切に応答する能力が劇的に向上し、ビジネスシーンでの活用も急速に進みました。  このように、AI技術はわずか十数年で研究レベルから実用化へ、そして企業の必須ツールへと進化しました。  AIは私たちの働き方や生活をどう変えているのか? AIの進化は、単なるテクノロジーの発展にとどまらず、私たちの働き方や生活を根本的に変えるインパクトを持っています。  AIがもたらす産業変革 現在、AIはすでに多くの業界で業務効率の向上や生産性の最適化を実現しています。  医療分野:AIが医療画像を解析し、病気の早期診断を支援  金融分野:AIが取引パターンを分析し、不正取引を検出  教育分野:個別学習プログラムの最適化により、生徒ごとに最適な教育を提供  農業分野:AIによる天候予測とデータ解析で作物の収穫量を最大化  自動運転技術:AIが交通状況をリアルタイム解析し、事故リスクを低減  IT業界におけるAIの活用 特にIT業界では、AIが開発プロセスを加速し、プログラマーの生産性向上に大きく貢献しています。  コードの自動生成:AIを活用したプログラミング支援ツール(例:GitHub Copilot)により、エンジニアの作業時間を50%以上削減  バグ検出の自動化:AIがエラーやセキュリティ脆弱性を瞬時に特定  テストの自動化:AIがテストケースを生成し、開発スピードを向上  こうした事例からもわかるように、AIはすでにさまざまな業界で業務の効率化と最適化を実現しており、企業にとって不可欠なツールとなっています。 なぜ今、企業はAIを導入すべきなのか? AI技術が進化し、活用の幅が広がる中、企業が今すぐAI導入に取り組むべき理由は次の3つに集約されます。  競争力の維持と市場での優位性確保 AIを活用する企業としない企業の間には、生産性やコスト削減の面で大きな差が生まれます。特にグローバル市場で競争力を維持するためには、AIの活用が必須です。  人材の生産性向上と業務効率化 AIはルーチン業務を自動化し、社員がより創造的な業務に集中できる環境を作ります。 これにより、社員の生産性が向上し、企業全体のパフォーマンスが最適化されます。 コスト削減と新たな成長機会の創出 AIを活用することで、業務の効率化によるコスト削減が可能になります。また、AIが生み出す新たなサービスや市場を活用することで、企業の成長機会が拡大します。  RikkeisoftのAI戦略—なぜ全社導入を決断したのか? AIはもはや選択肢ではなく、企業存続の必須要件 世界のIT市場では、AI技術を活用した企業とそうでない企業の間で、生産性や競争力に大きな差が生まれています。この流れの中で、Rikkeisoftが競争力を維持し、さらなる成長を遂げるためには、AIの全社的な導入が不可欠でした。具体的には、次の3つの要素がAI導入の決断を後押ししました。  1. 日本・米国・タイ・韓国市場の成長機会を活かすため Rikkeisoftは、日本・米国・タイ・韓国市場への事業拡大を進めており、これらの市場ではAIを活用したITソリューションへの需要が急速に高まっています。こうした市場の動向を踏まえ、RikkeisoftはAIを活用したサービスの強化を進め、グローバル市場での競争力を高める戦略を取ることを決定しました。  2. Rikkeisoft社員のAI活用ニーズの高まり Rikkeisoftの社内調査によると、多くの社員がAIを活用して業務効率を向上させたいと考えていることが分かりました。しかし、まだ十分にAIを活用できていない社員も多く、AI導入に対するサポートが求められています。  調査結果から分かった主なポイント: ・社員の80%以上がAIを業務に活用したいと回答 ・しかし、実際にAIツールを活用できている社員は50%未満  この結果を受け、RikkeisoftはAI導入に向けた教育プログラムや支援体制を強化し、すべての社員がAIを最大限に活用できる環境を整備することを決定しました。  3. AI導入により目指す姿—Rikkeisoftの未来像 Rikkeisoftは、AI導入を単なる業務効率化の手段と捉えるのではなく、企業の成長戦略の中核として位置づけています。AI導入によって、次のような未来像を実現することを目指しています。  全社員がAIを活用し、生産性を向上 ・ルーチン業務をAIが自動化し、社員はより価値の高い業務に集中できる ・プログラム開発の生産性が向上し、より高品質なサービス提供が可能に  Rikkeisoftのブランド価値向上と市場競争力の強化 ・AI導入を進めることで、IT業界におけるリーダー企業としての地位を確立 ・AIソリューションの提供により、顧客企業のDX推進を支援  2025年Rikkeisoft AIプログラムの概要 […]

March 6, 2025

AIエージェントとは?生成AIとの違いや課題、今後の展望

近年、AI技術の発展により、企業の業務効率化や自動化が加速しています。その中でも、特に注目されているのが「AIエージェント」です。AIエージェントは、単なる情報提供を超え、ユーザーの意図を理解し、判断を伴うタスクを自律的に遂行する技術です。カスタマーサポート、業務アシスタント、さらには自動運転など、さまざまな分野で活用が広がっています。本記事では、AIエージェントの定義や生成AIとの違いや課題、今後の展望についてわかりやすく解説します。  AIエージェントとは? AIエージェントは、人間が設定した目標に対して、 自然言語処理や機械学習の技術を駆使し、自律的に計画・意思決定しながら目標を達成するシステムのことです。目標は人間が与えますが、与えられた目標をどのように達成するのかをAIエージェントが自立的に判断し、アクションを起こします。  AIエージェントと生成AIとの違い 上述したように、AIエージェントは、与えられた目標に対して、自律的に判断し、行動するシステムで、代表的な例として、カスタマーサポートのチャットボットや自動運転車などが挙げられます。環境から必要なデータを自ら取得し、状況に応じて適切な行動を選択し、自律的に作業を進める点が特徴として挙げられます。  一方で、生成AIは、学習したデータを基に新たなコンテンツ(文章・画像・音声など)を生成するAIで、代表例として文章生成AIでChatGPTや画像生成AIのDALL・Eが挙げられます。  AIエージェントの課題 1. 説明可能性と透明性の確保 AIエージェントは複雑な判断を下すことが多くなりますが、その判断の根拠が不明瞭だと企業や社会での信頼性が低下します。特に、金融・医療・法律分野でAIが意思決定を行う際、その判断の理由を説明できる仕組みが求められます。  2. AIの誤判断・暴走リスク AIエージェントがリアルタイムで意思決定を行う場合、予期せぬ状況で誤った判断を下す可能性があります。特に、自動運転や医療AIなど、人命に関わる分野では安全対策が不可欠です。  また、例えば金融領域においてもAIエージェントが異常な市場データを誤認識し、大量の自動取引を行い市場を混乱させるといったケースも考えられます。このような問題を防ぐために、人間が介入できる仕組みが必要になります。  3. データプライバシーとセキュリティリスク AIエージェントは、大量のデータを分析し、意思決定を行います。しかし、その過程で個人情報や機密データを処理する可能性があり、プライバシーの侵害やデータ漏洩のリスクが高まります。  また、以下のようなリスクも考えられます。 ・AIエージェントが外部のクラウドサービスと連携してデータ処理を行う場合、サイバー攻撃の標的になりやすい ・企業の重要な業務をAIエージェントが担当することで、攻撃者がAIを乗っ取った場合の影響が大きくなる  そのため、AIエージェントを導入する際はセキュリティ対策(アクセス制御、データ暗号化、異常検知など)を強化する必要があります。  4. 責任の所在が曖昧 AIエージェントは自律的に判断し、タスクを遂行するため、問題が発生した際の「責任の所在」が曖昧になりやすいです。例えば、自動運転車が事故を起こした場合、責任はメーカー、開発者、利用者のどこにあるのかが議論されるように、AIが誤った判断をした際の責任を誰が負うのか非常に曖昧です。  また、AIエージェントは学習データやアルゴリズムに依存しており、開発者が意図しない判断をする可能性もあります。そのため、法的整備やガイドラインの確立、監督体制の構築・強化が求められます。  AIエージェントの今後の展望 1. 高度な自律型エージェントの進化 現在のAIエージェントは、特定のタスクを実行するルールベースや強化学習ベースのものが主流ですが、将来的には汎用型のAIエージェントが登場すると予想されます。例えば、AutoGPTやBabyAGIのような複数のタスクを自己計画・自己遂行できるエージェントが、ビジネスの様々な分野で活躍する可能性があります。  具体的には、企業の業務プロセス全体を理解し、適切なタイミングでアクションを実行するエージェントが開発されることで、タスク管理・プロジェクト推進・データ分析・顧客対応などを一括して管理するAIエージェントが誕生するかもしれません。  2. 生成AIとの融合による拡張 AIエージェント単体ではなく、生成AIと組み合わせることで、より高度な業務をこなせるようになります。具体例を以下で紹介します。  カスタマーサポート:AIエージェントがユーザーの質問内容を分析し、生成AIが適切な回答をリアルタイムで作成 マーケティング・営業支援:AIエージェントが顧客データを分析し、生成AIがカスタマイズされた営業資料や提案書を自動作成 業務自動化(RPAの進化):生成AIが書類を生成・要約し、AIエージェントがそれを承認・処理する  このように、AIエージェントと生成AIを組み合わせることで、柔軟で高度な判断が求められる業務にも対応できるようになります。  カスタムAI開発で業務効率化を実現しましょう! AIエージェントは、企業の生産性向上や業務効率化に大きく貢献する自立型AIです。今後は技術の進化とともに、より高度な判断が可能なAIエージェントが登場し、幅広い分野で活用されていくことでしょう。企業の競争力強化のためにも、適切な導入と運用が求められます。  リッケイは、AIに特化した関連会社を有し、お客様独自のニーズに応じたオーダーメイドのAIソリューションを設計から開発、運用保守までワンストップで提供することが可能です。コストパフォーマンスに優れたベトナムオフショア開発のメリットを活かしながら、高品質なAIシステムを実現します。カスタムAI開発をご検討中の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。     

February 13, 2025

オフショア開発の新潮流:チャイナリスクを避け、分散とリソース確保へ

近年、オフショア開発の目的は「コスト削減」から「リソース確保」へとシフトしています。特にチャイナリスクの高まりを受け、多くの企業が開発拠点の分散を進めています。  最新の「オフショア開発白書2024」によると、オフショア先としてベトナムが42%のシェアを獲得し、依然として最も人気のある国であることが明らかになりました。一方、中国は26%と2位を維持していますが、規制強化や単価上昇により新規発注の割合は減少傾向にあります。  本記事では、「オフショア開発白書2024」のデータを基に、チャイナリスクの現状、オフショア先分散の重要性、オフショア開発の最新トレンドについて解説します。  チャイナリスクの現状 「オフショア開発白書2024」によると、中国をオフショア先として活用する企業の割合は26%と依然として高いものの、近年さまざまなリスクが浮上しています。ここでは、企業が直面する具体的なチャイナリスクを整理します。  カントリーリスクの高まり 中国政府による規制強化や日中関係の悪化は、オフショア開発に大きな影響を与えています。特に以下の点がリスクとして指摘されています。  データセキュリティ規制の強化 近年、中国ではデータ管理に関する法律が厳格化され、国外とのデータのやり取りが制限されるケースが増えています。  ジオポリティクスの影響 米中対立の影響により、中国に拠点を置く企業が輸出規制や制裁の対象となるリスクが高まっています。  規制によるビジネス環境の不透明さ 突然の法律改正や政策変更が事業運営に影響を及ぼすことが懸念されています。 エンジニア単価の上昇 中国のプログラマーの平均人月単価は44.4万円と、ベトナムの39.4万円と比較して約12%高い水準となっています。さらに、シニアエンジニアやプロジェクトマネージャーの単価も高騰しており、特に高度技術分野(AI、ブロックチェーンなど)では、日本国内とほぼ同等、またはそれ以上のコストが発生するケースもあります。  中国には多くの優秀なエンジニアが存在し、先端技術(AI、クラウド、ブロックチェーン)の分野では依然として強みを持っています。しかし、これまで中国に開発を集中させていた企業は、カントリーリスクやコスト増により、開発の分散を進める必要性を感じています。「オフショア開発白書2024」によると、オフショア先の分散を検討している企業の割合は前年より増加しており、ベトナムやインド、フィリピンへのシフトが進んでいます。  最新のオフショア開発委託先ランキング 前章でも述べたように、中国のデータセキュリティ規制の強化や米中対立の影響、中国のエンジニア単価の上昇等の理由により、中国から他の国へ開発拠点を移行する企業が増加しています。  「オフショア開発白書2024」のランキングによると、2024年のオフショア開発委託先は以下のようになっています。  引用元:オフショア開発白書 2024年版 なぜベトナムがオフショア委託先として最適なのか ① コストパフォーマンスが高い ベトナムのプログラマーの平均人月単価は39.4万円と、中国より約12%安価です。シニアエンジニアやプロジェクトマネージャーの単価も、他のオフショア国と比べて競争力があります。 ② IT人材が豊富 ベトナムは国家としてIT人材の育成に力を入れており、エンジニアの供給が安定しています。日本語対応エンジニアの育成も進んでおり、日本市場向けの開発に強みを持っています。  ③ 日本との親和性が高い ベトナムは親日国であり、日本市場をターゲットにするIT企業が多いです。ブリッジSEの充実により、日本企業とのコミュニケーションもスムーズです。  ④ 開発分野の多様化 近年、ベトナムのオフショア開発は、従来のWebシステム開発やスマホアプリ開発に加え、AI・ブロックチェーン・クラウドなどの先端技術開発にも対応する企業が増えています。  ベトナム以外のオフショア開発候補として、インド、フィリピン、東欧諸国も注目されています。それおぞれの特徴は以下の通りです。  インド:  AI・ブロックチェーンなどの先端技術に強い。エンジニアのスキルレベルが高いが、プロジェクト管理が難しいことも。  フィリピン: 英語対応が可能で、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)やグローバル案件に適している。  東欧諸国: 高品質な開発が可能。欧米市場向けの案件が多いが、日本市場向けの経験が少ない。  オフショア開発の委託先を分散する重要性 近年、オフショア開発の戦略として「開発拠点の分散」が注目されています。ここでは、分散化が求められる理由と、具体的な分散戦略のポイントについて解説します。  1カ国依存のリスク オフショア開発の拠点を1カ国に集中させることは、ビジネスの継続性に大きなリスクをもたらします。  ①カントリーリスク 中国の規制強化、ミャンマーの政情不安、突然の法改正や貿易規制により、開発継続が困難になる可能性があります。  ②為替リスク 円安や現地通貨の変動によって、開発コストが大きく変動するリスクがあります。例えば、円安の影響で、中国の開発単価が前年比約10%上昇しました。  ③人材確保のリスク 特定の国でエンジニアの需給バランスが崩れると、採用競争が激化し、コスト増加につながります。  分散戦略のメリット ①事業継続性(BCP)の確保 特定の国で問題が発生しても、別の拠点で開発を継続できます。 例:ミャンマーの政情不安を受け、開発をベトナム・フィリピンへ分散する企業が増加。  ②コスト最適化 国ごとの単価差を活用し、コストパフォーマンスを最適化できます。 例:ベトナムでの基本開発 + インドでの高度技術開発 + フィリピンでのBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)などの組み合わせ。  ③技術・スキルの最適配置 国ごとの得意分野を活かし、開発効率を向上できます。 例:AI・ブロックチェーン開発はインド、モバイルアプリ開発はベトナム、サポート業務はフィリピンなど。  オフショア開発の分散化は、カントリーリスクやコスト上昇リスクを軽減し、安定した開発体制を構築するために不可欠な戦略です。多くの企業が中国依存を避け、ベトナムを中心に複数の国へ開発拠点を分散させる動きを加速させています。  特にベトナムは、コスト・技術・リソースのバランスが取れており、分散戦略の中心に適した国です。  オフショア開発の最新トレンド:コスト削減からリソース確保へ オフショア開発は従来「コスト削減」を最大の目的として活用されてきました。しかし、2023年から「開発リソースの確保」が主要な目的へと変化しています。  ここでは、その変化の背景と、今後のオフショア開発の方向性について解説します。  […]

February 12, 2025

ポストチャイナとベトナムの可能性 – (1)チャイナリスクと米中貿易摩擦の行方

近年、日本企業の中国から他国への拠点移転が加速しています。中国の人件費高騰や地政学リスクの増大を背景に、製造業を中心とする企業は、より安定した生産体制の確保を迫られています。さらに、2025年に発足したトランプ政権の関税政策がこの流れを一層強めています。 こうした状況の中で、チャイナリスクを回避しつつ、新たな成長市場を求める企業が注目しているのがベトナムです。本記事では、サプライチェーンの変化を踏まえ、日本企業の新たな選択肢としてのベトナムの可能性を探ります。 記事は2部構成の後編です。前編では、日本企業が直面しているチャイナリスクと米中貿易摩擦の影響について解説しました。後編では、日本企業が中国から他国へ拠点を移転する動向と、その中でも特に注目されているベトナムの優位性について詳しく見ていきます。 チャイナリスクとは何か? かつて「世界の工場」として多くのグローバル企業を惹きつけた中国ですが、近年は「チャイナリスク」という言葉が経済界で頻繁に取り上げられるようになりました。この言葉は、中国の政治・経済・社会的リスクが企業の経営やサプライチェーンに与える影響を指します。 近年、中国が抱えるリスクとして特に顕著なのは、地政学的リスク、経済政策の変動、人件費の高騰、貿易摩擦の影響、そしてコロナ政策に伴う供給網の混乱です。 まず、地政学リスクとして、米中対立の激化や台湾問題、南シナ海での緊張の高まりが挙げられます。これらの要因により、対中投資や貿易に対する不確実性が増大し、日本企業にとっても長期的な事業展開のリスク要因となっています。 次に、経済政策の変動も無視できません。中国政府は、外資企業に対する規制を強化する一方、国内産業を保護するための補助金や税制変更を行い、ビジネス環境に大きな影響を与えています。特に、データ管理や技術移転に関する規制の強化は、外資企業の競争環境を不安定にさせています。 さらに、人件費の高騰も企業にとって深刻な課題です。中国の労働コストは年々上昇を続けており、2025年には主要都市における製造業の平均月給が1,000ドルを超えると予測されています。この労働コストの急騰により、製造業の利益圧迫が避けられない状況になっています。 また、関税・貿易摩擦の影響も企業の戦略に大きな影響を与えています。2018年以降、米中貿易戦争が激化し、米国は中国製品に対して大幅な関税引き上げを実施しました。これにより、中国を経由した米国向け輸出のコストが大幅に上昇し、日本企業もサプライチェーンの再編を迫られることとなりました。 最後に、ゼロコロナ政策の影響も企業活動に深刻な影を落としました。中国政府は2022年まで厳格なロックダウンを継続し、その結果、物流網の混乱や生産遅延が頻発しました。これにより、現地工場の操業が停止するケースも相次ぎ、日本企業は供給網の安定性に対する不安を抱えるようになりました。 これらの要因により、中国を主要な生産拠点としていた企業は、サプライチェーンのリスク分散を余儀なくされています。 米中貿易摩擦の背景と2025年のトランプ政権の関税政策 日本企業が「チャイナリスク」に直面するようになった背景には、以前から続く米中貿易摩擦の拡大があります。この貿易摩擦は、米中間の経済対立が激化したことに起因しており、日本企業もその影響を免れることはできませんでした。 特に、2018年に発生した米中貿易戦争は、日本企業の事業戦略に大きな転換をもたらしました。トトランプ政権は中国の知的財産権侵害や不公正な貿易慣行を理由に、中国からの輸入品に対して段階的に追加関税を課しました。それに対抗する形で中国も米国からの輸入品に対して同等の報復関税を実施しました。結果として、日系企業が中国経由で米国に輸出する際のコストが大幅に上昇し、多くの企業が調達・生産拠点の見直しを迫られることとなりました。 2025年に再任されたトランプ政権は、対中輸入品に対する関税政策をさらに強化しました。具体的には、2025年2月1日に発令された大統領令により、中国からの全製品に対して10%の追加関税が課されました。これにより、既存の関税率に加えて新たに10%の関税が上乗せされることとなり、中国からの輸入品全般が対象となっています。 また、同時期にカナダとメキシコからの全製品にも25%の追加関税が適用されました。これらの措置は、米国の貿易赤字の是正や国内産業の保護を目的としています。さらに、トランプ政権は「相互関税(レシプロカル・タリフ)」の導入も検討しており、これは貿易相手国が米国製品に課す関税率と同等の関税を米国がその国からの輸入品に課すというものです。この政策により、中国、インド、トルコ、ブラジルなどが対象となる可能性があります。 これらの関税強化策により、日本企業はサプライチェーンの見直しや生産拠点の多角化を検討する必要性が一層高まっています。特に、中国を経由した米国向け輸出のコスト増加が予想されるため、生産拠点の分散や新たな市場の開拓が求められています。 ※本記事はここまでです。続きは後半の記事 「2025年、ポストチャイナとベトナムの可能性(2) ー 日本企業がベトナムへ拠点を移転させる理由」でご覧いただけます。ぜひ続きもお読みください。 無料eBookのダウンロード チェックリストでわかる 失敗しないオフショア開発会社の選び方 オフショア開発会社選びの準備から開発開始まで、多様な角度からチェックポイントを網羅。チェックリストを活用して効率的な選定や基準作りに役立ちます。 今すぐダウンロード(無料) 無料eBookのダウンロード 保存版 オフショア開発入門ガイド オフショア開発を始める前の気になる疑問を解決!オフショア開発を検討中の方に向けて、オフショア開発の基本的な知識から注意点までを解説します。 今すぐダウンロード(無料)